
セルティックスのペイトン・プリチャードは、昨季のNBAで最も効率よくアイソレーションから得点した選手だった。アイソレーションでのeFG%は58.6%でリーグ1位で、ニコラ・ヨキッチやシャイ・ギルジャス・アレクサンダー、ルカ・ドンチッチを上回った。ベンチから出る小柄なガードが、その一対一の力でチームの中心になろうとしている。
プレーオフ第3戦の終盤、プリチャードはベンチでアレン・アイバーソンに声をかけられた。「お前は今まで見た中で一番クールな白人の少年だ」という言葉だった。その夜の彼は5本の3ポイントを決め、ブザー直前には26フィートのステップバックで決勝に近い一撃を沈めた。第4戦では第1クォーター終了間際に片足でブザービーター3ポイントを決め、自己最多となるプレーオフ、キャリアハイの32得点を記録した。
小柄なシューターのルーツ
プリチャードは、チームで最もアイソレーションに強い選手であるにもかかわらず、本人はベンチの選手という立場にとどまっている。2年前に最優秀シックスマン賞を獲得した彼は、昨季は50試合で先発を務めた。それでも見た目は典型的なNBA選手とはかけ離れており、アシスタントコーチのサム・キャッセルは「体重を全部含めても6フィート1インチ(約185センチ)だ」と話す。
夏のオフシーズンには、プリチャードは独自のワークアウトを続けている。場所はエアコンのない地元の体育館が中心で、そこでは一対一の練習を延々と繰り返す。トレーナーのマイケル・ソアレスとともに、ケープコッドの高校の体育館に朝6時45分に入る日もある。彼は大学のディビジョンIIやIIIの選手、海外の選手、地元の友人たちを集め、ガス代や航空券を負担してまで、粘り強いディフェンスをしてもらっている。
一対一に賭ける理由
練習は1回あたり約2時間で、夏の間は週に3回ほど行われる。プリチャードは約150回のポゼッションを、ブロックやエルボー、コーナー、ウィングなど複数の位置から攻める。シュート成功率が60%を下回った日には、ディフェンダーがチポトレで食事をおごられる側に回るという独自のルールもある。
この取り組みは、彼が若い頃からのものだ。高校時代、ウェストリン(オレゴン州)のクラブスポーツというジムで、地元の元NBA選手スティーブ・ブレイクと一対一を重ねた。プリチャードは何度も負け続けたが、それでも毎日挑み続けた。セルティックスのアシスタントGMであるデイブ・ルーインは、プリチャードのアプローチをカイリー・アービングに似ていると評する。「二人は明らかに違う。しかし、一対一を技術向上の手段として使う点では、私が見てきた中で最も熱心な二人だ」と語った。
ワークアウトの成果は、数字にも表れている。昨季、ペイントエリアからのシュートを200本以上打った57人の中で、プリチャードは56%の成功率で3位に入り、上位にはヨキッチとケビン・デュラントしかいなかった。また、シュートクロックが残り4秒以下の場面で86本のフィールドゴールを決めている。これはデュラントを12本上回る数字である。
チームにとっての意味
セルティックスは、ジェイレン・ブラウンがフィラデルフィアへ移籍したあとの穴を埋める必要がある。ポール・ジョージは36歳で加入したが、キャリアの下り坂にあるとされる。そのためプリチャードが、攻撃を支える中心的な役割を担うことになる可能性が高い。
ヘッドコーチのジョー・マズーラは、「我々は毎年、彼により多くを求めてきた。彼はチームが必要とする役割を何でも引き受けられる」と評価する。一方で、マズーラは以前、プリチャードに「お前は周りを良くしていない」と厳しく指摘したこともある。その後、彼は手紙で和解を申し出た。プリチャード本人は、ドウェイン・ケーシーのような人々からの懐疑的な声も含め、自分を疑う人がいることを力に変えてきたと語る。
新たな契約と今後
プリチャードは2年総額4420万ドルの契約延長を結び、2030年までセルティックスに在籍することになった。マイク・コンリーは、彼について「ゲームを向上させようとする姿勢が常軌を逸している」と評した。
プリチャード自身は、将来について次のように語っている。「目が覚めたら、ウェンバンヤマになっているわけにはいかない。自分は自分の道を進むしかない」。小柄な司令塔が、自分で切り開いたスタイルでチームの未来を担えるかどうかが、今シーズンの焦点になる。