カイリー・アービングは、マーベリックスでの試合から18カ月以上遠ざかっていた9月初旬、南カリフォルニアで非公式のミニキャンプを主催した。新ヘッドコーチのダスティ・メイとそのスタッフも参加した。チームの若手との結束を深めることが、アービングにとってこの遠征の最大の狙いだった。
アービングはバスケットボールの練習に加え、ビーチヨガも行った。特に力を入れたのは、2025年ドラフト全体1位指名のクーパー・フラッグをはじめとする若手選手との関係づくりだ。アービングは、19歳のフラッグを「相棒」と呼んでいる。
メイHCは「彼がこれまで成し遂げてきたことを考えると、特に若い選手たちは彼の一言一句に耳を傾けている」と語った。
チームの顔としての役割
アービングは2023年2月のトレードでダラスに加入して以来、ロッカールームでリーダーとして、また影響力のある声として存在感を示してきた。マーベリックスでの出場は130試合にとどまるが、ドウェイン・パウエルが12シーズンを過ごした後に今オフ放出されたため、現在はチーム最古参の選手となっている。
アービングは、ダラスでの日々を「時に少し混沌としていた」と表現する。それでも、この数年間のフランチャイズのジェットコースターのような歩みの中で、落ち着いて安定感をもたらす存在であり続けた。
2024年のファイナル進出チームでは、ルカ・ドンチッチと並ぶ中心選手として声を上げ、チームを引っ張った。ドンチッチが期待のMVP候補であったにもかかわらず、当時のGMだったニコ・ハリソンがその後トレードに出した際には、誰よりも驚いたという。その後、ファンの怒りが噴出しチームが深刻な広報上の危機に陥った際も、アービングは理性と共感を示す声として際立ち、ファンからの支持をさらに高めた。
フロント陣、コーチ陣、そして選手の大半が刷新された今も、アービングはダラスでのプレーに意欲を見せている。ドンチッチのトレードに関わった主要人物は全員チームを去り、ハリソンGMは昨年11月に解任された。ドンチッチとの交換でチームに来たアンソニー・デイビスも、マーベリックスでは29試合(プレーイン出場2試合を含む)に出場したのみで放出されている。
フラッグとの融合に期待
34歳のアービングは、かつてドンチッチの相棒として迎えられた。現在は、フラッグを中心に築かれつつあるチームの最年長の主力という立場にある。ドンチッチやデイビスと同様に、いつ街を去ることになるのかという疑問も浮上している。その憶測の多くは、アービングとフラッグの15歳差と、この若き天才を軸に持続可能な優勝候補を作るというチームの方針に起因している。
当面のマーベリックスの目標はシンプルだ。フラッグとともに勝利の文化を確立し、2024年のファイナル以来となるプレーオフ進出を果たすことである。
アービングは「我々は何かを築いている。それが具体的にどんな形になるのかは正直わからない」と語った。「僕はページをめくって、新しい何かを築くことを楽しみにしている」。
ユジリ社長の期待
5月に就任したマーベリックスのマサイ・ウジリ社長は、フラッグとアービングの組み合わせの可能性に「大きな関心がある」と強調していた。この組み合わせは、アービングが2025年3月に負った左膝前十字靭帯断裂からの回復中だった昨シーズンは実現しなかった。ウジリ社長は、ポイントガードとウィングの連携が成功につながることを身をもって知っている。2019年には、カイル・ラウリーとカワイ・レナードを擁したトロント・ラプターズでNBA制覇を果たしている。
純粋なバスケットボールの観点から見ると、アービングとフラッグは非常に相性が良い。アービングはドリブルからの仕掛けに長けたエリートクリエイターであり、オフボールでキャッチ&シュートする脅威としても機能する。また、レブロン・ジェームズ、ケビン・デュラント、ドンチッチなど数多くのスターと共にプレーしてきた豊富な経験を持つ。
フラッグは「彼と一緒にプレーするのは簡単なんだ」と語る。「もちろん、彼はこのゲームの偉大な選手の一人だ。素晴らしい才能の持ち主だけど、その才能と人間性が合わさって、隣でプレーするのがとても楽なんだと思う」。
フラッグはルーキーシーズン中、療養中だったアービングと頻繁に練習後の時間を過ごした。デュークからドラフト全体1位で入団した先輩とのこの関係は、フラッグのプレーにも活きている。2人はアシスタントコーチを相手に1対1を交互に行った。アービングが引き出しの多い技を披露すると、フラッグがそれを再現しようとしたという。
今夏は、ピックアップゲームでフラッグがようやくアービングと一緒にプレーできるようになった。この経験が2人の関係を一段階押し上げ、本格的な試合への期待も高めている。
ポイントガード不在の課題とフラッグの変化
フラッグはルーキーシーズンに平均21.0得点、4.5アシストを記録した。しかし、シーズン序盤はスペーシングの悪さに苦しみ、ポイントガードとして起用されるなど本来のポジションではない役割を担っていた。伝統的なポイントガードと組んだ際には、その得点力と効率が劇的に向上したという。
昨シーズンフラッグと組んだポイントガードは、D’エンジェロ・ラッセル(現在は中国バスケットボール協会の上海サメ)と、ライアン・ネンバード(現在はデンバー・ナゲッツと2ウェイ契約)だった。一方でアービングは、同世代の選手たちから「史上最も技術に優れたガードの一人」と呼ばれることが多い。
その評価は今も変わらない。シーズン開幕戦でのロケッツの守備戦術がそれを物語っていた。ロケッツのイメ・ウドカ監督は、夏のピックアップゲームやマカオでの プレシーズンマッチでアービングの凄さを目の当たりにしており、アービングを徹底的にトラップすることを最優先に据えた。
ロケッツが128対110でマーベリックスに勝利した試合後、デュラントは「カイリーは600日間も試合から離れていたが、我々の戦術はすべて彼を中心にしたものだった。カイリーはそれほど危険な選手なんだ」と語った。この試合ではフラッグが32得点を挙げたが、チームは敗れた。
アービングは長期離脱からの復帰直後のため、プレー時間に制限を設けられている。それでも今シーズンはすでに、ダラスの二人の主力がデュオとして持つ危険性の片鱗が見えている。メイHCは「二人とも非常に多才な選手だ。シュートも打てるし、ドライブもできるし、パスも出せる。楽しいパズルになるだろう」と話した。
フラッグは金曜日のインディアナ・ペイサーズ戦で、速攻の場面で悪質なファウルを受け、第2クォーター終盤に左肩の軽い捻挫を負って退いた。それでも前半のマーベリックスは見事だった。アービングとフラッグは合計27得点8アシストを記録し、チームは35点のリードを奪った。
フラッグ復帰後の圧巻のパフォーマンス
フラッグは月曜日に復帰し、アウェーでのマイami・ヒート戦でアービングと合わせて47得点17アシストを挙げ、勝利に貢献した。フラッグ自身は29得点、6リバウンド、11アシスト、5スティール、3ブロックという圧倒的な内容だった。第4クォーターには12得点を挙げ、最後の1分にはアンドリュー・ウィギンズの逆転を狙ったコーナースリーをブロックする、試合で最も重要な守備プレーも見せた。
アービングは、フラッグを自身が共にプレーしてきた殿堂入り確実の選手たちと比較することを避けている。誤解を招く発言が広まらないよう慎重な姿勢を崩さない。それでも、このチームメイトに明らかな感銘を受けており、フラッグの将来の偉大さを予見している。
アービングは「彼は若くして、チームを引っ張る競争心を持っている。優れたチームの中で補完的な役割を果たしながら、同時にスタッツ面でもチームを牽引できる。二刀流の選手であることが素晴らしいし、2年目に入っても声を上げることを大切にしている。彼は新人王を獲得したから、大きなプレッシャーもある。私はその重圧を少しでも和らげるためにここにいると思っている」と語った。
ウジリ社長との抱擁
アービングがヒューストンのトヨタ・センターのコートに向かう途中、廊下でウジリ社長の姿を見かけて立ち止まった場面があった。約20カ月ぶりとなるレギュラーシーズンの試合出場を、その数分後に控えた瞬間だった。2人は抱き合い、感謝と敬意の言葉を交わした。
2人が一緒に仕事をしてきた期間はわずか数カ月だが、互いを知り、尊敬し合う関係は数年に及ぶ。この光景は、フラッグを中心にコンテンダーを築こうとする新たなマーベリックスの首脳陣と、アービングとの結びつきや方向性の一致を象徴していた。
ウジリ社長は「我々は本当に彼を信じている。彼がこのチームで成功できると心から信じている。適切な選手が起用されれば、新しいシステムとダスティ、そして我々が築こうとしている新しい文化の中で、チームは本当に成長できると思う。心からそう信じている」と語った。
トレードの可能性と契約の行方
一方で、アービングをトレードに出すことは、枯渇しているドラフト資産を補充する機会にもなり得る。ハリソン前GMの取引により、マーベリックスは今後4年間、自力で1巡目指名権を保有できない状況にある。アービングをダラスに連れてきた取引もその一つだ。リーグ全体の関係者の間では、通算8回のオールスター選出を誇り、プレーオフでの長い実績を持つアービングには、活発な市場が存在するとの見方が広がっている。
アービングは「ここでは全てが透明だ。何一つ隠されたものも、舞台裏で秘密にされていることもない。メディアに物語を売ろうとしているわけでもない。聞かれれば、今の状況と自分の気持ちを正直に話す。ただ、若いチームであることも忘れないでほしい。彼らは非常に影響を受けやすい。ロッカールームに余計なものを持ち込みたくないし、僕の名前がトレードの噂に上がることや、他の選手が噂の対象になることも望んでいない。この联盟にはそうした話題が多すぎる。人々の精神衛生にも影響するし、日々の仕事にも影響を与える。ベストなチームを作るためには、全員が同じ方向を向いてオールで漕ぐ必要があるんだ」と語った。
マーベリックスは2024年のファイナル以降、ドンチッチが放出され、過去2シーズンはプレーオフを逃している。それでもアービングは、ダラスを離れる意向を示していない。
「この街に来てから、フランチャイズとしてだけでなく、ファンからも温かく迎えられたことに本当に惚れ込んでいる。街全体からの支えも大きい」と彼は話す。
アービングの契約には、来シーズンの4,240万ドルのプレーヤーオプションが含まれている。そのため、自身の不透明な将来を決める権限を握っている。このオプションにより、ウジリ社長がトレード交渉を来夏まで先送りする可能性も生まれる。その時点であれば、フロントはサイン・アンド・トレードや延長を絡めたトレードの選択肢を理論上検討できる。
あるいは、アービングがダラスに留まり、フラッグの相棒としてこの先何年もプレーを続けるという道もある。エージェントは継母のシェテリア・ライリー・アービングが務めている。ダラスでキャリアを終えたいかと問われると、アービングは率直だが、はっきりとは言い切らない答えを返した。
「それが自分のコントロール下にあればいいとは思うけど、ここでは協調的な取り組みだと思う。それは理解できるだけの成熟さは持っている。……年齢差(フラッグと僕の)があることは分かっている。みんなそれを大きく取り上げたがる。……このフランチャイズに対して寄せられる正当な批判は、すべて正当なものだと思う。それから目を背けるつもりもない。」
「でも僕の関心は、成長を続け、この仲間たちと全力を尽くすことにある。コートに立ったら、ただ楽しむこと。楽しむと言うとき、それは最高レベルで競い合い、勝利を目指すということなんだ」。